【インタビュー】JICAフィリピン事務所 NGOコーディネーター 浅田恵理さん

JICA:独立行政法人国際協力機構は、技術協力有償資金協力(円借款)、無償資金協力の援助手法を一元的に担う総合的な政府開発援助(ODA)の実施機関です。

NPO法人ユニカセ・ジャパンの学生スタッフ(Niki)が、現地でNGOコーディネーターという仕事をされている浅田さん にお話を伺いました。(以下、敬称略)

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玉井
今日はお忙しいところ、ありがとうございます。
早速ですが、NGOコーディネーターというお仕事をされているんですね。
どうしてこの仕事をされようと思ったのですか?
浅田
大学生のときに新潟中越地震で知人宅が被災し、新潟を訪れました。そのとき私と同じようなボランティアに多く出会ったのですが、全員が全員歓迎されているわけではなかった。地元の方々が県外からの訪問者対応に困っている状況も見かけたんです 。

誰かの助けになりたいと思って行動に移した人々の善意がうまく回っていない、被災地の方々にとって重荷にすらなっている、なにかがおかしいと感じました。

同時に、活動希望内容と支援要請内容を整理して、ボランティアする側と受入れ側を上手く繋いでいる市職員さん にも出会いました。彼を通すことで双方納得した良い状態で活動が行われていたんです。間に入って互いをうまく調整する人がいることで、結果が大きく変わることを知りました。

その後、縁あって中間支援組織NPO法人Youth Visionでインターンし「ボランティアコーディネーター」と呼ばれる職業の存在を知りました。活動の場はさまざまですが、1足す1を10にも100にもするのが、ボランティアコーディネーターの役割です。私が新潟で出会った市職員さんは、まさにボランティアコーディネーターだったんですね。

この大学時代の苦い経験と気付きを通し、ボランティアコーディネーターという仕事を極めたいと強く思うようになり、NGOコーディネーターとして働かせて頂いています。今はボランティアコーディネーション力検定一級取得も目指し勉強中です。

玉井
すごい!社会人になられてからも努力を続けておられるのですね。ところで、このお仕事で一番難しいと思われることはなんですか?
浅田
日本の学生さんが、スタディーツアーの一環としてフィリピン事務所訪問される事があるのですが、そのさまざまな訪問目的や希望内容に沿った対応をするのが本当に難しいです。限られた時間の中でたくさんの(知識の)お土産を持って帰ってもらいたいのですが、興味関心分野や理解度もそれぞれ違うためどんなアレンジにするのかが難しい…。訪問者さんによってこの国ならではのストーリーを足したり、他所員にも協力頂きキャリアトークの時間を設けたりして工夫をこらしています。毎回勝負のような感じです。

また、草の根技術協力事業(※)も大事な業務です。現在フィリピンで25のプロジェクトが実施されていますが、どれも活動分野も場所も違います。私はNGO職員さんのように常時現場にいるわけでなく、特定分野の専門家でもないので、どうやったら一つ一つの事業が成功するのか、NGO皆さんとのコミュニケーションを通し試行錯誤を繰り返しています。

玉井
私たちも学生なので、できることは限られていて…。いま自分たちに何ができるのかを日々考えています。いま感じておられることを教えていただけないでしょうか。
浅田
たまたま途上国の貧困層に生まれたから、医療が整っていない地域で育って、やる気はあるのに勉強すらも出来なくて、更には軽度の病気で生死をさまよう命があります。その一方で、私は日本人として生まれ、有難いことに大学にも行かせてもらい、日本の家族も今のところ元気で、海外で長く仕事していてもフィリピンに台風がくれば心配して毎回連絡をくれる友人もいる。そんな自分を ただただ「この境遇に生まれてラッキーだったな。」で終わるのか、それとも、この境遇に生きている間の使命が課せられているのだと思って、行動する人生を選ぶのか。それは自分次第です。私は幸いにもいま他人のことを考える余裕があるので、なにかしないといけない。見知ってしまった以上、なにか行動しつづけたいと思っています。だからこのようなお仕事は何らかの形で一生続けていきたいです。
そしてそのように感じて行動してくれる日本の学生さんが一人でも多くなれば、という気持ちで、スタディーツアー参加者さんへも接しています。
玉井
ぜひ参加して、現場で役に立つボランティアを勉強してみたいです。
浅田
ありがとうございます、そう言ってもらえてうれしいです。最初の話に繋がりますが、その気持ちと行動が善意の押しつけになってしまっては悲しいので、自身も取り組んでいて楽しいと感じられる分野で、且つその時の自分に出来る範囲をきちんと見極めつつ、受け入れてくれる相手側の気持ちにも配慮しながらの形を模索していきたいですね。まさにコーディネーターの存在価値が問われるところでもあるので、私も頑張ります。
玉井
今日は本当にありがとうございました。

(※)草の根事業協力とは
日本のNGO、大学、地方自治体及び公益法人の団体等がこれまでに培ってきた経験や技術を活かして企画した、途上国への協力活動をJICAが支援し、共同で実施する事業です。

詳細は…

インタビューを終えて‥‥

「ただラッキーだったでおわるのか、行動する人生を選ぶのか」という浅田さんの言葉が、今でも鮮明に耳に残っています。今回フィリピンを訪問して、使命感をもって日々の仕事に取り組む方にたくさんお会いしました。今回のインタビューは、浅田さんが明確な理由をもって仕事に取り組んでいるのだ、ということが痛いほどに伝わったものでした。そして今、自分がなにかできるとしたら何なのだろうか、という問いが残っています。

浅田さん、本当にありがとうございました!

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